シュガー・ハイ

甘味や糖質との出逢いを記録します。

サロン・デュ・ショコラに行ってきた(後編)

前回の続きで、サロン・デュ・ショコラの感想と教訓について備忘のため書く。

  • やっぱり人が多いが、耐えられないほどではない

報道などで見る会場や入場者数からもっと耐えられないくらいの混雑を想像していたけれど、実際はそこまでではなかった。
東京の満員電車に普段乗っているチョコ好きならチョコへの想いで余裕で乗り切れるレベル(個人の感想です)。
尤も行ったのが平日の遅い時間だったので、開始直後などは違うのかも知れず、来年以降要検証ではある。

  • 入念な予習と早めの準備が必要

混雑と興奮でその場での冷静な判断や比較検討は不可能。
そのためショコラティエ、ボックス、フレーバー、限定品など事前のリサーチが必要不可欠になる。
また、ショコラティエのトークショーなどもあったが、ことごとく申し込み期間を過ぎていた。
松があけた頃から日々サイトをチェックするべきだった。

  • 欲しいものがあるなら初日に並ぶか伊勢丹カード会員になるべし

二日目の夜ですら売り切れ続出、初日の夜でなかったものもあったようだ。
どうせ並ぶのだから覚悟を決めて有給をとるほかない。
開場で入れれば午前中で回れるような気がするが、午後に自分が使い物になるかどうかは疑問。
セレクションボックスなどには伊勢丹カード会員にオンライン先行受注の機会があったようなので、大物はまずそちらで手に入れるのが賢いかもしれない。

  • 遅い時間はいいこともあるけど、早めに終わるイートインもあり

オフィシャルサイトには書かれていなかったが、私が行った日のジャンポールエヴァンのイートインは閉場予定の30分前(19時30分)に終了した。
ただ遅くなるほど空いてくるのも事実で、アイスモンスターが待ち時間なしのときも見かけた。
目的別に行く時間帯を分けるという選択も考えられよう。

私でも名前を知っているような方も色々お見かけしました。
その場で箱やムック本にサインをもらっているお客さんも。
自分はサインをねだるほどでもないのだけれど、ミーハー心はやはり多少喜んでしまう。

  • なんだかんだいって楽しい

結局これです。要はお祭りなのです。
なぜ今まで行かなかったのか自分を責めているところです。
来年も行きます。

サロン・デュ・ショコラに行ってきた(前編)

www.salon-du-chocolat.jp

本当は初日の夜に参戦するつもりだったが、〆切残業コンボに阻まれ
二日目の18時すぎに新宿NSビル到着となった。
やはりというかなんというか、幾折もの、少なくとも100名ほどの行列があったけれども、シェイク・シャックに寒空の下並び、一時間弱待って孤独のグルメをかましてきたハートは揺らぐはずもない。
迷わず最後尾に付けると意外にも進みは早かった。多分20分も待たなかったと思う。*1
今回は初めての参加なのであくまでも様子見のつもりで、イートイン中心に、ジャン=ポール・エヴァ一神教からの脱却を求めセレクションボックスを求めることに決めていた。
しかし予定はあくまでも予定でしかない。
実際に購入した品を以下に記す。順番は時系列である。

  • ジャン=ポール・エヴァン エクスキ・モモ セット

乱暴に言うとすごく高いPALM(片面ナッツ付き)。
2個または3個のセット販売。縦5cmほどと小さいので、多分3ついけると思ったがとりあえず2個のものにした。
中ヴァニラアイスは同じで、コーティングのチョコレートを3種の中から選ぶ。
選んだフレーバーはマダガスカルとサオ・トメ。後者は日本限定だとのこと。
外のチョコレートは薄くぱりぱり、かじると中のアイスがあふれてくるくらい中トロ。
味は、うーん、私はこれでなければとは思わなかった。
ここのブティックで買えるチョコアイスが大好きなので、期待が大きすぎたのかもしれない。
チョコレートってこの状態ですごく冷たいと香りや味がわかりにくいと思う。ちょっと残念でした。

  • ジャン=ポール・エヴァン ショコラ・ショとボンボン、こしょうのセット

会場限定のこちらは大ヒット。頼んでよかった!
全三種類のうち一種しか残っていなかったため、そちらをオーダー。
一日限定30食とかだったと思うので、この時間でも残っていたのは僥倖である。
ボンボンもさることながら、ショコラ・ショ(いわゆるホットチョコレート)とこしょうの相性がすばらしかった。
ショコラ・ショ自体は伊勢丹のショップなどで何度かいただいたことがあるのだが、こしょうが入ると香りの印象がまったく変わり、一層刺激的で官能的なフレーバーになった。
連日の残業で光が消えかけていた私の目にも力が戻ってきた…ような気がする。
億万長者になったら毎朝飲みたい。
提供方法は丸の内のチョコレートバーと同じで、シャレオツな紙カップ*2にプラ蓋というスタイル。
べた褒めしたいところだけれど、私はこのプラ蓋だけはいただけないと思う。
馥郁たるショコラの香りが台無しではないか。
この蓋については帰ってから色々考えたのだけれど、多分さめないようにというエヴァン氏一流の気遣いだろうという結論に落ち着いた。
ゆえに、いただくそのときには蓋なんて捨てちまうのがベストかと存じます。

  • パティスリー・サダハル・アオキ たこやき

サダハルアオキの列は信じられない複雑な形状をしていて、長さを見積もり誤った。
しかも物販と調理してるものの列が一緒なので、理屈どおり倍混んでいた。
並ぼうとは思っていたのだけれどもなんか悔しい。
まあでもタコヤキ、お祭りっぽくてよいですね。
味は普通というか、調理方法及び温度の関係でどう作ってもこうなるだろうなーという感じでした。
材料とか配合とか違うんでしょうけれど、私にはよく読み取れず。
エヴァン氏のところもそうなのですが、調理してる方おつかれさまです。

  • パティスリー・サダハル・アオキ ボンボンショコラ グランクリュ

ブースに青木氏ご本人がいらっしゃって、片っ端から箱にサインをばんばん入れてらしたので買ってしまった。
嗚呼ミーハー。ちまちま食べているので後でなにか書けたら書くことにしたい。
サダハル・アオキ、実はパリの支店にも行ったことがある。
たしか2009年の初夏のことで、パリの思い出も所々ぼんやりしてきているが、あのタルト・シトロンは強烈に覚えている。おいしかったなぁ。

  • ワールド チョコレート マスターズ

買おうと思っていた全部入りセレクションボックスが売り切れで買えなかったのでむしゃくしゃして買った。
私は2005年山本さんの「アストロノーム」という塩とキャラメルのものと、2009年平井さんの柚子「ポーション」が好きでした。

セレクションボックス品切れで、悔しさと余った予算を握りしめ、イートインコーナーに突撃した。
伊勢丹セレクションのチョコレート(確か11種類くらい*3)から好きなものを3種選べるナイスな催しである。
正直あんまり予習していなかったのでフィーリングで選んだことをここに懺悔します。
しかし全体的にクオリティたかくて良かった。

ダヴィド・カピィ トリロジ
 これはすばらしかった。大当たり。驚きもありつつ完成度も高い。
 今度はボックス買います。
・ヴァンサン・ゲルレ アリアンス
 ショコラのギモーヴに惹かれ選択。
 こちらもかなりよい。もっと違うのもいただいてみたいところ。
・クリスティーヌ・フェルベール アヴォンチュール
 コンフィチュールで有名な方ですね。やっぱり中のライムジャムの方が出色な気が。

  • おまけ ル・グルニエ・ア・パン

きのこのタルティーヌとスパークリングワインのセットをいただく。
タルティーヌ、麹町のお店にもあったっけ?そんなに空腹でもなかったくせに綺麗に完食。
最近チョコにはカフェイン類よりももっぱらアルコールなので嬉しかった。


タルティーヌを食べ終わった時点で20時を少し過ぎていたが、
客たちには帰る気配がないし、店側もまだまだ稼ぐつもりのようだった。
長くなってしまったので、今回全体の感想と教訓は次の記事で。

*1:というか何基準で人を入れているのか?謎である。

*2:エンボス加工の白地の紙に青でパリっぽい柄が入れてあって、持つ所には熱かったり滑って落としたりしないようにゴムっぽいスリーブが付けてある

*3:なんで3の倍数にしないのかと不思議だった覚えが。でもその場合うっかり大人買いのリスクがあるので、顧客に優しいと言えば優しいのか

【V.D.】チョコレートアイスクリーム(シェイクシャック/外苑前)

今年の正月休みは短かった。
松が明けるのも待たず、昼酒の習慣も、何だったら前日の酒も抜けきらぬまま仕事である。
それと同時に、甘味の世界は一年で最大ともいうべきイベントにむけシフトしはじめた。そう、バレンタインデー*1である。

チョコレート会社の陰謀だとか、カップルへの怨嗟などの些末なことについて書くつもりは毛頭ない。そんなことはどうでもよい。
世界のうまいチョコレートが味わえる、ただそれだけで、いや、その一点において2月14日には計り知れない価値があるのだ。
というわけで、チョコレートについて書くつもりだった。
昨年から食べてみたいと思っていた、パレドオールの獺祭チョコで獺祭リベンジを決めつつV.D.前哨戦の鏑矢としたい、そんな心づもりであった。だがその道中、思いがけずすばらしき甘味に出会ってしまったので、今日はそれについて書くことにする。


1月11日はこれまでの暖冬ぶりが嘘のような冷え込みで出かけるのも気が重かったが、せっかくの休み、かつ3連休のうち先の2日を正月休みを取り返すかのような引きこもりで過ごしてしまったこともあって、ひとまずチョコレートとは別の懸案の店に出かけることにした。
そこで昼食を済ませてから銀座に寄り、そこから丸の内でチョコを手に入れることにしようと決め家を出発した。

今日のお店:SHAKE SHACK

シェイクシャック 外苑いちょう並木

食べログ シェイクシャック 外苑いちょう並木


到着したのは10時半を数分過ぎたところだった。
この日の開店は11時だったが、店の前にはすでにそれなりの長さの列ができていた。

結論からいうと、レジの前で自分の注文を伝えるところまでちょうど1時間かかった。
チーズバーガーに「シュルーム*2」が入った「シャックスタック」、チーズのかかったフライドポテト、チョコレート・アイスクリーム、オリジナルブレンドのエールビールをオーダーし、支払いと引き換えに呼び出し用ブザーをもらって席を探す。アイスクリームは食後の引きとりが可能だそうでありがたい。
この時点で残念ながら店内は満席だったので、必然的に外のテラス席を選ばざるを得なくなる。
しっかり防寒してきたので並んでいるときは何ともなかったが、このテラス席のスチール製の椅子が曲者だった。
冷たい。お尻が冷たいだけでこんなにも寒いなんて。
アイスクリームを頼んだことを若干後悔しつつ、温かいものが早く欲しかった。

並んでいたときの列の進みから更なる待ち時間を覚悟したところ、意外にも10分ほどで手元のブザーが鳴った。

これまた結論からいうと、ハンバーガーもポテトもおいしかった。ただ一点、秒速で冷めていくことを除いては。
ビールも流石、ハンバーガーによく合う味だ。しかし割合と冷えていた。
ビールは体を温めるにはアルコール度数が低く、椅子は相変わらず冷たかった。
店に備え付けのブランケットは薄く無力だった。

全部おいしい。おいしいけど、寒くて正直それどころではなかった。
満腹感も相まって、そもそも甘味の中ではそこまで好きではないアイスを注文してしまった後悔は増すばかりで、
このまま店を後にすることまで考えたが、持ち前の貧乏性と食い気で食べていくことにした。
ハンバーガーなどとともに渡された紙にはアイスの品名の隣にHOLDの文字があり、なるほどこれで区別しているらしい。
店員さんに紙を手渡し、セルフサービスのスプーンを手に所在なく待っていると、1分か2分ほどで提供された。注文していたのは、アイスクリーム(ここでは「フローズン・カスタード」という)に様々な具材を混ぜ込んだ「コンクリート」というカテゴリの中の、「シャックアタック」という名の一品だ。なんでもチョコレート・カスタードをベースに、ファッジソース、ドミニクアンセルベーカリーのポップコーンブラウニー、ヴァローナチョコレート、チョコレートスプリンクルが入るらしい*3
要はチョコのカタマリである。

見た目は率直に言ってあまり美しいとはいえず、良いように言えば今混ぜたという臨場感がある。
むしろややカップからこぼれはじめている。
すべてがチョコレート色のアイスにはぬるりとやわらかな艶があり、無骨な某かの塊がいくつかその存在を主張していた。
こうなるともう辛抱たまらぬ。
大きめのスプーンにこれまた大きめにすくって口に入れると、すぐに幸せが訪れた。美味しい。寒いけど、おいしい。
チョコレートの苦みや香りが強すぎず弱すぎず適度で、乳脂肪分が高いのであろう、濃厚さもある。
そして特筆すべきはその柔らかさだ。
ホイップされているおかげか、ふわりと軽い舌触りの後広がり、柔らかく口内に馴染んでいく。
そしてポップコーンブラウニー。
正直に申告すると、寒さもあって、今自分が食べている食感の違うものが何なのかよくわからなかった。ただ固い、食感の違うもの。
だがそれだけでよかった。完璧だった。
ショコラティエのチョコレート・アイスクリームも美味だが、あれはチョコそのものに対する感動に近い。
これはそれとは少し違う、チョコではあるがそれよりもアイス、もっと言うとサンデーの類のように感じた。

少しだけ残しておいたチーズポテトと半分くらい残しておいたビールをお供にアイスを食べていると、幸福以外のなにものでもなかった。
今日の選択にはただのひとつの誤りもなかったのだ。
私はすっかり満ち足りた酔っ払いになって店を後にした。
行列は、並び始めたときの倍ほどの長さに伸びていた。

あまりにも満たされていたので、ほろ酔いのまま銀座に向かってマリアージュフレールで紅茶を飲み、ガラスのマグを手に入れ帰宅した。
気がつくと少しだけ風邪をひいていた。
もう少し暖かくなったら、今度はホットドッグを食べに行きたいと思う。

*1:「ヴァレンタイン」という表記がどうにも気恥ずかしい

*2:この店のスペシャリテともいうべき、きのことチーズをまとめてフライにしたもの

*3:好みのトッピングを選んでオリジナルの「コンクリート」を作ることもできるそうだが、最初はどうしても一番王道っぽいものを頼んでしまう

【正月】花びら餅(一幸庵/茗荷谷)

正月のお菓子といえば、花びら餅である。
ここ数年、世間ではガレット・デ・ロワの台頭めざましいが、私はやはり花びら餅なくして新年は迎えられぬと思うのだ。*1


花びら餅は正確には葩餅と書く。歴史は古く、起源は平安時代にまでさかのぼる。
裏千家の初釜にも古くから用いられており、花びら餅の元祖である「川端道喜」という老舗和菓子店のものが供されるそうだ。
「川端道喜 花びら餅」で画像検索してみると半熟の目玉焼きのような、あんがとろりと流れ出している写真がでてきて、非常に強く心惹かれるが、在東京の一般人が思いついて買えるものではないらしく、こちらについては今後の課題としたい。
なんでも事前に予約して試作品の「試餅(こころみのもち)」をわけていただく、という形らしく、お値段はなんと1ヶ1500円ほどだそうだ。
京都の老舗ってすごい。


川端道喜の花びら餅「御菱葩」と一般に出回っているものでは、餡のテクスチャにこそ違いがあるものの、その構成要素は同じである。
すなわちごぼう白味噌のあん、桃色の餅とそれらを包む求肥(餅)の4つだ。
白いヴェールのような求肥から薄く桃色や黄色の餡がぼんやり淡く透けて見える、シンプルながら美しいたたずまいの菓子である。
決して激しい美味というわけではないものの、ほわんと幸福感のある味と見た目に私はどうしても心惹かれてしまうのだ。
ここ数年は行きつけの和菓子屋で購入していたが、調べているうちにどうやら店によって味が結構違うらしいことがわかり、今年は新しい店にトライすることにした。個人的に和菓子はいまひとつ自信がないジャンルなので、開拓の意味も込め。


今回のお店:和菓子調進所 一幸庵

一幸庵

食べログ 一幸庵


最寄駅は丸ノ内線茗荷谷である。評判がよく前々から気になってはいたお店だが、足を運ぶのは初めてだ。
1月1日はよく晴れており、駅前の通りをはさむ高いビルが濃い影を落としていた。
閑散とした道を5分ほどゆき、大きな通りから少しだけ入った場所に店はあった。
入り口は少し奥まっていて、ここに和菓子屋があると知らなければ気づくのはなかなか難しいだろう。
ガラス戸をのぞくと、店内は先客で賑わっていた。
元日の昼ごろにこの混みよう、自然と 期待が膨らむ。
店に入り接客を待つ間、入口すぐに見本として用意されている8種ほどの正月の和菓子とその説明を眺めた。
小さな札に名前だけではなく、「練りきり」などの種類も書かれているのは親切だし、お店のこだわりを感じうれしい。*2
細かな字を読んでいると、なんと、獺祭の錦玉羹があるではないか。
獺祭といえば、奇遇にも年末からちまちまと大切に楽しみつつ、スパークリングや酒粕にも手を出していたところだ。
日本酒の錦玉羹、それも獺祭のとは、いったいどんな味がするのだろうか。
よし、これも買おう。心に決めたところで順番がきた。

先ほどは他の客で見えなかったが、接客のためのカウンターにもケースがあり、そこにも本日のラインナップの見本が並べられていた。
しかしそこで目に飛び込んできたのは、「予約完売」の文字。
ああ無情、錦玉羹ともう一つ、干支モチーフのお菓子が売り切れだった。
つらい。皆考えることは同じである。午前中にのぞいたデパートの初売りの行列が脳裏によみがえる。
仕方がないので、当初の目的だった花びら餅と、愛らしい桃色の花を模し、銀箔をひとかけらあしらった練りきりをひとつずつにした。
またもビジュアル重視チョイスをしてしまいなんとなく敗北感を感じつつ、家路についた。
あのときは動揺しすぎて思いつかなかったが、錦玉羹は来年また出るのかどうか、予約はいつからか聞けばよかった。


夕食の後に紙箱を開けると、花びら餅の由来について書かれた三つ折りの紙が入っている。*3
それによれば、花びら餅が現在の形になったのは明治からで、牛蒡は押し鮎の代わりなんだとか。
この種の紙にはいろいろなパターンがあるが、これは花びら餅(紙によれば正しくは菱葩餅)のひととおりの来歴がわかる内容で、一読の価値が大いにあると思う。

一幸庵の花びら餅は白が濃く比較的ぴんとした形をしていて、一見硬めの餅に見えるが、持ち上げるとあまりの柔らかさに驚く。
ならば粘りが強いのかと思いきや、意外にもすんなりと切れた。口に入れると、今まで和菓子で感じたことのない食感だ。
さながらマシュマロのようで、しかしもっと柔らかくすぐに溶けてしまう。
まず食感の驚きがあり、ついで餅と一体になった味噌餡のほのかな塩味を感じる。
全体的には思いのほかしっかりと甘く、これはお茶のためのお菓子なのだなと改めて思う。
緑茶で物足りる味ではなく、このために抹茶を用意しなかったことが悔やまれた。
食べすすめると、ほとんど手ごたえのない中で柔らかく煮られた牛蒡がわずかにその存在を主張し、絶妙なバランスを構成している。
甘みと薄い塩気でつかみどころのない味と、柔らかすぎるほどに柔らかな餅という初めての組み合わせに当惑しつつも、なんともいえぬめでたさのようなものを感じていた。初日の出にかかる浮き雲を食べている心地だ。
「なんだかよくわからないがとにかくめでたい」なんて、日本の正月そのものではないか。
やはりこんなに正月らしいお菓子はないと思う。
そればかりか、正月という非日常のありがたみも、花びら餅の味を構成する要素なのかもしれない。


一緒に買った練りきりもよい内容で、一幸庵の底知れぬ実力を垣間見たような気がした。
また別の折にもぜひ伺いたいと思う。次回は、わらび餅で。
今年もよいお店や、よいお菓子との出逢いがあることを願う。

*1:かといってガレット・デ・ロワはいらぬとなるはずもなく、摂取カロリーの増大は不可避である。ぱりぱりのパイと濃厚なクレーム・ダマンド、そしてかわいらしいフェーブ、なんと素晴らしい。

*2:もっとも半分くらいしかわからなかったのだが。和菓子を買うときはどうしてもビジュアル重視になりがちなので、いまいちど製法と種類について学ぶべきだと思った。

*3:私はこれが好きで、「蘊蓄紙(うんちくがみ)」と呼んでいる。必ず食べる前に読む。