シュガー・ハイ

甘味や糖質との出逢いを記録します。

【V.D.】チョコレートアイスクリーム(シェイクシャック/外苑前)

今年の正月休みは短かった。
松が明けるのも待たず、昼酒の習慣も、何だったら前日の酒も抜けきらぬまま仕事である。
それと同時に、甘味の世界は一年で最大ともいうべきイベントにむけシフトしはじめた。そう、バレンタインデー*1である。

チョコレート会社の陰謀だとか、カップルへの怨嗟などの些末なことについて書くつもりは毛頭ない。そんなことはどうでもよい。
世界のうまいチョコレートが味わえる、ただそれだけで、いや、その一点において2月14日には計り知れない価値があるのだ。
というわけで、チョコレートについて書くつもりだった。
昨年から食べてみたいと思っていた、パレドオールの獺祭チョコで獺祭リベンジを決めつつV.D.前哨戦の鏑矢としたい、そんな心づもりであった。だがその道中、思いがけずすばらしき甘味に出会ってしまったので、今日はそれについて書くことにする。


1月11日はこれまでの暖冬ぶりが嘘のような冷え込みで出かけるのも気が重かったが、せっかくの休み、かつ3連休のうち先の2日を正月休みを取り返すかのような引きこもりで過ごしてしまったこともあって、ひとまずチョコレートとは別の懸案の店に出かけることにした。
そこで昼食を済ませてから銀座に寄り、そこから丸の内でチョコを手に入れることにしようと決め家を出発した。

今日のお店:SHAKE SHACK

シェイクシャック 外苑いちょう並木

食べログ シェイクシャック 外苑いちょう並木


到着したのは10時半を数分過ぎたところだった。
この日の開店は11時だったが、店の前にはすでにそれなりの長さの列ができていた。

結論からいうと、レジの前で自分の注文を伝えるところまでちょうど1時間かかった。
チーズバーガーに「シュルーム*2」が入った「シャックスタック」、チーズのかかったフライドポテト、チョコレート・アイスクリーム、オリジナルブレンドのエールビールをオーダーし、支払いと引き換えに呼び出し用ブザーをもらって席を探す。アイスクリームは食後の引きとりが可能だそうでありがたい。
この時点で残念ながら店内は満席だったので、必然的に外のテラス席を選ばざるを得なくなる。
しっかり防寒してきたので並んでいるときは何ともなかったが、このテラス席のスチール製の椅子が曲者だった。
冷たい。お尻が冷たいだけでこんなにも寒いなんて。
アイスクリームを頼んだことを若干後悔しつつ、温かいものが早く欲しかった。

並んでいたときの列の進みから更なる待ち時間を覚悟したところ、意外にも10分ほどで手元のブザーが鳴った。

これまた結論からいうと、ハンバーガーもポテトもおいしかった。ただ一点、秒速で冷めていくことを除いては。
ビールも流石、ハンバーガーによく合う味だ。しかし割合と冷えていた。
ビールは体を温めるにはアルコール度数が低く、椅子は相変わらず冷たかった。
店に備え付けのブランケットは薄く無力だった。

全部おいしい。おいしいけど、寒くて正直それどころではなかった。
満腹感も相まって、そもそも甘味の中ではそこまで好きではないアイスを注文してしまった後悔は増すばかりで、
このまま店を後にすることまで考えたが、持ち前の貧乏性と食い気で食べていくことにした。
ハンバーガーなどとともに渡された紙にはアイスの品名の隣にHOLDの文字があり、なるほどこれで区別しているらしい。
店員さんに紙を手渡し、セルフサービスのスプーンを手に所在なく待っていると、1分か2分ほどで提供された。注文していたのは、アイスクリーム(ここでは「フローズン・カスタード」という)に様々な具材を混ぜ込んだ「コンクリート」というカテゴリの中の、「シャックアタック」という名の一品だ。なんでもチョコレート・カスタードをベースに、ファッジソース、ドミニクアンセルベーカリーのポップコーンブラウニー、ヴァローナチョコレート、チョコレートスプリンクルが入るらしい*3
要はチョコのカタマリである。

見た目は率直に言ってあまり美しいとはいえず、良いように言えば今混ぜたという臨場感がある。
むしろややカップからこぼれはじめている。
すべてがチョコレート色のアイスにはぬるりとやわらかな艶があり、無骨な某かの塊がいくつかその存在を主張していた。
こうなるともう辛抱たまらぬ。
大きめのスプーンにこれまた大きめにすくって口に入れると、すぐに幸せが訪れた。美味しい。寒いけど、おいしい。
チョコレートの苦みや香りが強すぎず弱すぎず適度で、乳脂肪分が高いのであろう、濃厚さもある。
そして特筆すべきはその柔らかさだ。
ホイップされているおかげか、ふわりと軽い舌触りの後広がり、柔らかく口内に馴染んでいく。
そしてポップコーンブラウニー。
正直に申告すると、寒さもあって、今自分が食べている食感の違うものが何なのかよくわからなかった。ただ固い、食感の違うもの。
だがそれだけでよかった。完璧だった。
ショコラティエのチョコレート・アイスクリームも美味だが、あれはチョコそのものに対する感動に近い。
これはそれとは少し違う、チョコではあるがそれよりもアイス、もっと言うとサンデーの類のように感じた。

少しだけ残しておいたチーズポテトと半分くらい残しておいたビールをお供にアイスを食べていると、幸福以外のなにものでもなかった。
今日の選択にはただのひとつの誤りもなかったのだ。
私はすっかり満ち足りた酔っ払いになって店を後にした。
行列は、並び始めたときの倍ほどの長さに伸びていた。

あまりにも満たされていたので、ほろ酔いのまま銀座に向かってマリアージュフレールで紅茶を飲み、ガラスのマグを手に入れ帰宅した。
気がつくと少しだけ風邪をひいていた。
もう少し暖かくなったら、今度はホットドッグを食べに行きたいと思う。

*1:「ヴァレンタイン」という表記がどうにも気恥ずかしい

*2:この店のスペシャリテともいうべき、きのことチーズをまとめてフライにしたもの

*3:好みのトッピングを選んでオリジナルの「コンクリート」を作ることもできるそうだが、最初はどうしても一番王道っぽいものを頼んでしまう